ウェルシュ菌の特徴はガス壊疽を引き起こす

ウェルシュ菌で食中毒

食中毒暑くなってくる時期、同時に気になってくるのが「食中毒」ですよね。食中毒というと「O-157」などの大腸菌を思い浮かべがちですが、「ウェルシュ菌」による食中毒というものはあまり知られていないかもしれません。
ウェルシュ菌は広く知られていないにも関わらず、案外身近でおそろしい症状を引き起こす菌なのです。
今回はそんなウェルシュ菌についてご紹介します。

どこにいるの?

ウェルシュ菌は、嫌気性菌の一種で、酸素がない場所で増殖する菌です。案外身近に、そこらへんの土壌の中に広く存在しています。また、酸素がない場所ということで、密閉された容器や徐々に空気が抜けていく環境などにもよく存在しています。
そこら中にウェルシュ菌がいると思っても、ほぼ間違いではありませんね。







どんな菌?

シチューウェルシュ菌(Welch菌)は、Clostridium(クロストリジウム)属の1種です。正しくは、Clostridium.perfirngens(クロストリジウム・パーフリンゲンス)といいます。クロストリジウム属には他にも、ボツリヌス菌や破傷風の原因となる菌など、様々な毒素を持った菌がいます。ここから考えても、おそろしい菌の1種だということがわかりますね。

ウェルシュ菌は、ガス壊疽(えそ)と呼ばれる感染症の原因になります。ガスを産生し、皮下組織や筋肉に壊死を起こす怖い感染症です。また、シチューやカレーなどの食品中でも増殖し、食中毒の原因ともなります。

芽胞って何?

ウェルシュ菌を含め、クロストリジウム属の菌は、芽胞(がほう)をつくることでも知られています。菌にとって不都合な環境になると、その菌の体内にその環境に耐久できる構造物を形成します。その構造物こそが芽胞です。芽胞の中にはDNAなどの菌の成分がコピーされており、菌自体が自己保存を行っていると言えます。


菌の休眠状態と考えてもいいかもしれません。芽胞→発芽→増殖を繰り返すことで、柔軟に環境の変化にも対応していくことができるのです。芽胞になってしまうと、100℃の加熱にも耐えてしまいます。そのため、芽胞になった菌を滅菌するためには、121℃で20分間の高圧蒸気滅菌が必要だと言われています。地球上の生物の中で最も高温に耐えうる生物が芽胞だとも言われています。

真空パック製品や瓶詰、缶詰などに入った食品を食べた時に、ボツリヌス菌によるボツリヌス中毒になったというニュースを耳にしたことがあるかと思います。ボツリヌス菌も同じクロストリジウム属なので、芽胞を形成します。

そのため十分に滅菌されていないと、酸素がない環境下で増殖し、中毒症状を引き起こしてしまうのです。ウェルシュ菌も症状こそ違えど、そういったものだと考えてもらえれば分かりやすいかと思います。